民主党「中絶の権利」を主張

『民主党が、中間選挙の勝利のために莫大な広告費をかけて「中絶の権利」を主張』

AP通信 9月21日記事参照)

(シカゴ発 11月12日オフィス・ファウンテン発信 ファウンテン・メディア・チーム安達祐子 山中泉)

民主党は、中絶の権利に関する広告にかつてないほどの資金を投入している。11月の中間選挙を目前に、中絶の権利が民主党にとっていかに中心的なメッセージであるかが浮き彫りになっている。

選挙戦の最も激しい時期が始まったばかりだが、民主党は今年に入って中絶に言及したテレビ広告にすでに推定1億2400万ドル(約176億円)以上を投じている。

これは民主党が2番目の重要課題としている「個性の尊重」の2倍以上の金額で、2018年の中間選挙で民主党が中絶関連の広告に費やした金額の20倍近くだ。

超党派の調査会社AdImpact提供のデータをAP通信が分析したところ、ほとんどの州で中間選挙に向けた争点を一つに絞っている。アメリカ人の大多数が、この国は間違った方向へ向かっており、経済は悪い状態にあると考えているにもかかわらずだ。

また、この分析から、最高裁が中絶の権利を認めた判例を覆す判断をして以来、共和党の広告がいかに中絶から遠ざかっているかが分かる。(AdImpactのデータは、テレビの選挙広告をチェックし、その放映に関連するコストを推定している)

中絶の権利を憲法上排除するという6月の最高裁判決以来、民主党側が支出したテレビ広告費のおよそ3分の1は、中絶に焦点を当てたものである。この広告費の多くは、中間選挙に立候補する共和党議員を攻撃するためのものだ。長年にわたって中絶の権利に反対し、中絶の権利を制限や中絶の違法化を州ごとに運動を展開している共和党議員がターゲットになっている。

民主党が9月18日までに中絶の権利に関するテレビ広告に費やした金額は、共和党が経済、犯罪、移民に関連する広告に投じた金額の合計よりも大きい。

「選挙まで60日を切ったいま、中絶の選択の権利を認めない共和党が私たちの身体と将来をコントロールし、有権者に嘘をつき続けることを傍観することはできない」と、中絶関連の広告で400万ドル(約5億7000万円)以上を投資したメリッサ・ウィリアムズは述べている。ウィリアムズは、妊娠中絶選択権を尊重する米民主党派女性候補を支援する団体であるEMILY’s Listが主宰するWOMEN VOTE!というプログラムの責任者だ。「我々は、有権者が中絶の権利を守るために、中絶の権利に賛成する議員と反対する議員を明確にしている」

民主党が中絶に相当な力を入れていることは、6月の最高裁の判決と、その後の十数州における共和党支持の中絶禁止の波を考えれば、驚くことではないかもしれない。しかし、この戦略は、トランプ前大統領や経済、教育、医療といった他の問題に近年焦点を合わせてきた民主党の姿勢とは、大きく異なる。

例えば2018年の中間選挙では、民主党が中絶関連のテレビ広告に費やした金額は600万ドル(約8億5000万円)未満だった。AdImpactによると、トランプ関連の広告に5100万ドル(約72億円)、医療問題に4900万ドル(約70億円)、教育に4600万ドル(約65億円)と比較すると、その差は歴然だ。

中絶の権利の最高裁の逆転劇は政治的な広告の起爆剤に

6月の最高裁の逆転判決とそれをリークする報道が、有権者の投票への動機となった。民主党側は広告で中絶に焦点を当てたが、共和党はそれを避けた。

テレビ広告のデータによると、共和党も中絶メッセージに何百万ドル(何億円)も投資していることが分かる。しかし、共和党の中絶に関する広告の多くは、中絶反対をアピールするために春から夏にかけての共和党予備選の時期に放映された。中絶に関する広告は、5月以降毎月減少している。

秋の中間選挙が近づくにつれ、中絶広告に対する民主党と共和党の支出額の差はさらに広がっている。例えば、9月までに民主党側は、中絶に関する6万8000件以上の広告をテレビで放映した。これは共和党側の15倍の数字だ。民主党が中絶に関する広告に費やした費用は3100万ドル(約44億円)だが、共和党はわずか280万ドル(約4億円)だった。共和党のロナ・マクダニエル委員長は、最近のインタビューで、民主党が中絶に関するストーリーを作り上げることは許されないと語った。

「民主党が中絶問題でしか勝負できないのは明らかだ。彼らは景気回復や地域の安全、教育では勝負できないのです。彼らができること、それは中絶の権利を争点にすることだ」とマクダニエルは語った。

共和党のリンゼイ・グラハム上院議員(サウスカロライナ州選出)は、妊娠15週目での中絶を全国的に禁止することを提案し、共和党指導者たちを怒らせた。これは、共和党が数年にわたり支持してきた法案だ。しかし、選挙の8週前に一部の共和党議員が中絶規制を全国的に採用したいと考えていることを有権者に知らせるような行為は得策ではないと考えたのだ。

マクダニエルは、民主党が主張する中絶の権利に反対するのはなく、多くの有権者に寄り添うように共和党候補たちに促している。共和党のリーダーや候補者たちは、その話題を振られれば答えるが、多くの有権者が見ているテレビ画面での統一の見解は示していない。

一方、民主党は、ノースカロライナ州、ニューメキシコ州、ミネソタ州、アリゾナ州、コロラド州、フロリダ州で、共和党候補をターゲットにした中絶関連の新しい広告を出している。中絶問題はカリフォルニア州とフロリダ州の下院の激戦区で常に議論されている。共和党の下院候補はニューヨーク州北部、コネチカット州、ミシガン州、インディアナ州の選挙区で中絶の権利に反対しているとして攻撃を受けている。

共和党の候補者は、地元のテレビ局で複数の中絶関連の広告のターゲットされることもある。

ウィスコンシン州の共和党知事候補、ティム・ミシェルズがその1人で、対立候補の民主党知事トニー・エヴァースを含む3つのグループから中絶関連の攻撃広告のターゲットになっている。3つの広告キャンペーンはいずれも、ミシェルズがレイプや近親相姦の場合でも中絶の権利に反対しているという内容だ。

エヴァース陣営が流している広告では、「あなたが知事にしたいのは過激派の彼ですか?」というナレーションが流れる。

ミシェルズ陣営にコメントを求めたが、返答はなかった。

全米で一番弱い民主党上院現職候補といわれているキャサリン・コルテス・マスト候補がいるネバダ州でも、同じことが起きている。9月に、少なくとも2つの反共和党グループとコルテス・マスト陣営が、共和党のアダム・ラクサルトに対して中絶関連の広告を流していた。

コルテス・マスト陣営の広告では、「共和党は女性の選択に干渉しようとしている」と言う医師が登場した。

その広告で「私のような医師にとって、女性が自分にとって正しい決断をするために必要なサポートを得られるようにすることが仕事だ。しかし、アダム・ラクサルトそれに反対している」と医師は語る。

ラクサルトは彼に対する中絶関連の広告への反撃を試みた。

「コルテス・マストとその陣営は、選挙広告に何百万ドル(何億円)も費やして、私が全国的な中絶禁止を支持しているとか、「反女性」の立場だとか、デマを信じさせようとしている。私は一貫して、最高裁は中絶の問題を国民に返し、州ごとに判断させるべきだという見解を持っている」

ネバダ州の上院議員選挙ではこれまで中絶が大きな焦点となっていたが、他の選挙では中絶関連の広告がはるかに多く見られる。

AdImpactのデータによると、今年中絶に関連するテレビ広告が最も多く放映されたのはペンシルベニア州とアリゾナ州の上院議員選挙で、次いでイリノイ州、ジョージア州、ウィスコンシン州の知事選挙だった。(今回敗退したカンザス州の憲法改正投票では、ユニークな選挙であり、最も多くの広告が見られた)。

ジョージア州の民主党知事候補ステイシー・エイブラムスは、8月から9月にかけて、カメラに向かって直接話す複数の女性の言葉を使い、共和党のブライアン・ケンプ知事を攻撃する広告キャンペーンを展開した。

広告では「彼は、私がレイプされても、近親相姦の被害者であっても、中絶の全面禁止を支持している」と言う女性が登場する。また別の女性は泣きながら「ケンプは知事になったら、流産しただけで捜査され、投獄されるかもしれない」と訴えた。

ケンプの広報担当者テイト・ミッチェルは、この広告は不正確であるとし、「ステイシー・エイブラムスのキャンペーンは、人々に恐怖を与え、ジョージア州に対する彼女の危険な政策から有権者の目をそらすために嘘をついている」と非難した。

いくつかの激戦州では、強姦、近親相姦、母親の生命が危険にさらされている場合などの中絶を認める共和党の有力候補の意見に、民主党が積極的に賛同している。

民主党のベテラン広告マンでBlue Amp Strategiesの創設者であるクリフ・シェクターは、「民主党の今年の中絶に関するキャンペーンは成功している」と言う。

シェクターは、全米で実施される新しい中絶規制について、こう語る。「リベラルな女性、中道の女性だけでなく、保守的な女性ですら恐怖に感じている。このことに目を向けないのは、正しい行為ではない」

AP通信記事

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